横須賀歴史エリア戦略

1 各エリアの探求 ~学校教育の役割~


 地域の発展の基盤となる役割を担っているのは、何といっても教育でしょう。歴史エリア戦略の根拠は文部科学省の学習指導要領にも見出すことができます。小学校3年生と4年生の社会科の目標です。

〔第3学年及び第4学年〕
1 目標
(1) 地域の産業や消費生活の様子,人々の健康な生活や良好な生活環境及び安全を守るための諸活動について理解できるようにし,地域社会の一員としての自覚をもつようにする。
(2) 地域の地理的環境,人々の生活の変化や地域の発展に尽くした先人の働きについて理解できるようにし,地域社会に対する誇りと愛情を育てるようにする。
(3) 地域における社会的事象を観察,調査するとともに,地図や各種の具体的資料を効果的に活用し,地域社会の社会的事象の特色や相互の関連などについて考える力,調べたことや考えたことを表現する力を育てるようにする。


 下線部にあるように、「地域の発展に尽くした先人の働きについて理解」することにより「地域社会に対する誇りと愛情を育てる」、という目標が述べられています。ここで、浦賀駅前の住重浦賀工場跡地の壁面にある、横須賀市の中学生たちが描いた明治維新にまつわる絵画を思い浮かべることができるでしょう。きっとこれを描いた児童たちは、地域への愛着と誇りを胸に成長していると思います。


     <鴨居中学校の生徒による象山と松陰が泊まった徳田屋の絵>    <浦賀中学校の生徒による黒船四隻の絵>


 次に、6年生の目標をみてみます。

〔第6学年〕
1 目標
(1) 国家・社会の発展に大きな働きをした先人の業績や優れた文化遺産について興味・関心と理解を深めるようにするとともに,我が国の歴史や伝統を大切にし,国を愛する心情を育てるようにする。
(2) 日常生活における政治の働きと我が国の政治の考え方及び我が国と関係の深い国の生活や国際社会における我が国の役割を理解できるようにし,平和を願う日本人として世界の国々の人々と共に生きていくことが大切であることを自覚できるようにする。
(3) 社会的事象を具体的に調査するとともに,地図や地球儀,年表などの各種の基礎的資料を効果的に活用し,社会的事象の意味をより広い視野から考える力,調べたことや考えたことを表現する力を育てるようにする。


 3・4年生の目標が「地域」にあったことと比較すると、ここでは「国家・社会」に視野が広がっていることがわかります。ここで横須賀市の強みは、地域の発展に寄与した先人と、国家・社会の発展に寄与した先人が同一であることが多い、ということにあります。ペリー来航に対応した中島三郎助、横須賀製鉄所を立ち上げた小栗田忠順などはその具体例でしょう。また戦争の時代における海軍の歴史や現在の米軍基地なども、横須賀が常に国家の事象と一つであることの証といえるでしょう。
 地域を考えることと国家・社会を考えることが同じ水準にあるという、この横須賀の強みを生かすことが、横須賀市の今後の発展につながると考えます。小学校6年生社会科の「2 内容」には、次のような記述があります。

2 内容
(1) 我が国の歴史上の主な事象について,人物の働きや代表的な文化遺産を中心に遺跡や文化財,資料などを活用して調べ,歴史を学ぶ意味を考えるようにするとともに,自分たちの生活の歴史的背景,我が国の歴史や先人の働きについて理解と関心を深めるようにする。
ウ 源平の戦い,鎌倉(かまくら)幕府の始まり,元との戦いについて調べ,武士による政治が始まったことが分かること。
キ 黒船の来航,明治維新,文明開化などについて調べ,廃藩置県や四民平等などの諸改革を行い,欧米の文化を取り入れつつ近代化を進めたことが分かること。


 ここにあるのは、日本全国の小学生が学ぶ内容です。横須賀市の子どもたちは、まさに鎌倉幕府の始まりや黒船の来航、そして明治維新を体感できる場所に住んで生きているのです。横須賀市の子どもたちが、地域で生活しながら国家的視野を持つことができる可能性がここにあります。ここに「歴史エリア戦略」の根拠があります。

 また、三浦半島の自然環境は、大変魅力ある景観を呈すると同時に、活断層の存在にあるような危険性も同時にはらんでいます。理科の学習においても、私たちはこうした身近な自然環境を肌で感じながら学習できる環境にあります。一般的な学習と具体的な体験が同一のものとなる横須賀の強みを生かし、横須賀における学校教育で培った知識や体験を、大人になって横須賀に還元していく、そうしたサイクルをさらに強めていく、という方法論として「歴史エリア戦略」があります。

 参考に、中学校学習指導要領、理科第2分野の内容は次のようになっています。

〔第2分野〕
2 内容
(2) 大地の成り立ちと変化
 大地の活動の様子や身近な岩石,地層,地形などの観察を通して,地表に見られる様々な事物・現象を大地の変化と関連付けて理解させ,大地の変化についての認識を深める

(7) 自然と人間
 自然環境を調べ,自然界における生物相互の関係や自然界のつり合いについて理解させるとともに,自然と人間のかかわり方について認識を深め,自然環境の保全と科学技術の利用の在り方について科学的に考察し判断する態度を養う
 イ 自然の恵みと災害
 (ア) 自然の恵みと災害
自然がもたらす恵みと災害などについて調べ,これらを多面的,総合的にとらえて,自然と人間のかかわり方について考察すること。


 横須賀の子どもたちが横須賀について広く深く学び、そこから横須賀の未来を考え、大人になって横須賀のために働く、そうした円環をつくっていくことが「歴史エリア戦略」の狙いです。学校教育において郷土である横須賀のことをしっかりと学ぶ環境をさらに整えていくことが必要です。