横須賀歴史エリア戦略


2 各エリアの深化 ~社会教育の役割~


 社会教育施設としては、図書館・博物館・美術館があります。図書館は上町に中央図書館、夏島町に北図書館、久里浜に南図書館、そして若松町に児童図書館があります。博物館は深田台に横須賀市自然・人文博物館、関連施設として天神島臨海自然教育園・ビジターセンター、馬堀自然教育園、そしてヴェルニー公園内にヴェルニー記念館があります。美術館は鴨居に横須賀美術館があります。これをエリア別に見てみると次の表のようになります。


エ リ ア 博物館・美術館
図書館
 太古エリア
天神島ビジターセンター


「西 図 書 館」

神話~中世エリア
横須賀美術館
 
「東 図 書 館」
明治維新エリア
「浦 賀 奉 行 所」
 
南 図 書 館
近・現代エリア
自然・人文博物館
 
北 図 書 館
中央図書館

*「 」は、今後整備していきたい施設です。



 こうした社会教育施設に関しては、①学校教育における活用、②生涯教育施設として大人のための活用、③将来の人材育成を目的とする研究活動の場としての活用、が考えられます。この三つの活用は、いずれも現在行われていることですが、この三つを意識的に関連付けて、施設活用の成果を横須賀市のために生かしてもらう、という視点をもって取り組んでいくことが必要です。

 その際、各エリアの特色を生かし、その特色にあった形で社会教育施設のあり方を整理することが必要だと考えます。ここでは次のように、エリアごとにその機能を持たせてみたいと考えます。

<太古エリア>天神島ビジターセンターと新設西図書館の連携

 太古エリアにおいては、古い地層や植物を観察できる天神島臨海自然教育園があり、同じ場所に研修室や展示室を備えるビジターセンターがあります。ここで自然を観察したり、グループで研究活動をすることができます。この施設と連携するべき図書館が現在はないので、「西図書館」を整備する必要があるでしょう。新しく整備した「西図書館」には、三浦半島の成り立ちや地層、活断層などの地理に関する書籍、また、自然、植物、動物などに関する書籍を重点的に整備します。

<神話~中世エリア>横須賀市美術館の再編

 神話~中世エリアには横須賀市美術館があります。東京湾が一望でき、お洒落なレストランもある素敵な建物です。ここは美術館ですから美術品の展示をしていますが、博物館にあるような品々も、美術としての価値があります。具体的には、ヤマトタケルに関すること、縄文・弥生・古墳時代のこと、そして三浦一族にまつわる品々を展示することにより、もっと横須賀の成り立ちを市民に広めることができるのではないでしょうか。そしてこのエリアには図書館がありませんので、「東図書館」の整備が必要です。神話・古代・中世の書籍を重点的に整備することにより、市内におけるこの時代研究の拠点にしていくことができると考えます。

<明治維新エリア>新設浦賀奉行所ミュージアムと南図書館のコラボ

 この場所には江戸時代に大きな役割を果たした浦賀奉行所跡があります。現在この土地は使われておらず、とてももったいない気がします。この場所に「浦賀奉行所ミュージアム」をつくることにより、明治維新に横須賀が果たした役割を内外にアピールしてはどうでしょうか。図書館は少し離れますが久里浜に南図書館があります。ここに明治維新にまつわる書籍を重点的に整備します。明治維新のことは何でもあそこへ行けば調べることができる。そうした特色づくりが必要だと考えます。どこへ行っても同じような本が一応揃っている、というような必要はありません。各エリアが特徴をもちながら連続性がある。そうした地域づくりが必要だと考えます。

<近・現代エリア>自然・人文博物館と中央図書館のコラボ

 近・現代エリアは、横須賀市の中心部にあります。ここには自然・人文博物館と中央図書館があります。自然・人文博物館は自然や生物・植物の展示、歴史的には古代から近代までの展示と、自然と歴史の全てが揃っていてとても重厚な感じのする博物館です。しかし、すべてが揃っているということは、重点がどこにあるのか不明である、という欠点も同時に持っています。そこで、自然と生物・植物は太古エリアに、古代から中世までの歴史は神話~中世エリアに、明治の歴史は明治維新エリアに移転し、この場所は、横須賀の近・現代に関する博物館として特化してはどうでしょうか。歴代の海軍大将が足しげく通った料亭小松のある場所から横須賀製鉄所のあった横須賀本港を抜け、伊藤博文が明治憲法を構想した夏島まで、ここには日本の近代から現代が詰まっています。さらに、米軍基地と自衛隊基地には、まさに日本と世界の現在が息づいています。ですから、中央図書館には、こうした問題意識をもって図書の整備をする必要があります。近・現代に加え基地と軍事と平和といったテーマを重点とした図書館。横須賀の近現代エリアならではの図書館づくりができるとよいと思います。


 以上のような社会教育施設の再編にあたっては、自然や歴史を学ぶ博物館・本を読む図書館・美に触れ感動する美術館というように、施設とその役割が1対1対応となっているような従来の発想でなく、それぞれの役割・機能を統合し、一つの施設において「学び・探求し・感動する」環境をつくることだ必要だと考えます。古墳や武士の鎧を見てそれらを学問すると同時に、その形状に美があることを感じることのできる環境を整えてあげたいと思います。学問を感動と共に伝えること、子どもたちの魂をゆさぶることが教育の出発点です。

 そして、子どもたちに感動を与えるのは大人たちの情熱です。社会教育の成果を大人たちが子どもたちに伝えていく、そうした機能を社会教育施設が担っていくことをさらに積極的に進めていくことが必要でしょう。