持続可能な開発のための教育

万人のための教育世界会議


 19903月にユネスコが中心となってタイのジョムティエンで開催した会議。「万人のための教育(EFA: Education for All)」をスローガンとして、初等教育の完全普及・男女修学差の是正・先進国が途上国の教育改革を後押しすることなどを世界共通の目標とするといった国際的コンセンサスが形成された。

万人のための教育世界宣言


3.最も緊急の優先事項は女子や婦人が教育を受ける機会を確保し、女子や婦人の教育の質を高め、女子や婦人が教育に参加するのを妨げるすべての障害を除去することである。教育の上での性別による固定的観念を取り除く必要がある。
4.教育の不平等を除くために、積極的なコミットメントがなされなければならない。教育の機会を十分に与えられていない人々、つまり貧しい人々やストリートチルドレン、働く子供、農村や遠隔の地の住民、遊牧民や移住労働者、先住民、民族的・人種的・言語的少数者、難民、戦争で流民化した人々、占領下の住民に対して学習の機会へのアクセスという点で、いかなる差別もしてはならない。
5.障害者の学習のニーズに対して特別の関心を払う必要がある。教育制度の不可分の一環として、すべてのタイプの障害者に対して教育を受ける平等な機会を提供するための手段がとられなければならない。


特別なニーズ教育に関する世界会議:アクセスと質


 1989年に採択された「児童の権利に関する条約」の第23条では、障害のある子どもについて可能な限り社会への統合が行われること及び教育・訓練の機会を利用できるようにすることとしている。また199312月、国運第48回総会において採択された決議「障害をもつ人々の機会均等化に関する基準原則」では、障害のある子ども、青年、成人について、初等教育、中等教育、中等教育終了後の教育における統合された場での教育の機会均等の原則を認識すべきであるとしている。こうした状況を背景に、19946月に、スペインのサラマンカで、「特別なニーズ教育に関する世界会議:アクセスと質」が開催された。

特別なニーズ教育における原則、政策、実践に関するサラマンカ声明と行動の枠組み


 「特別なニーズ教育に関する世界会議:アクセスと質」において採択された宣言。万人のための学校(すべての人を含み、個人主義を尊重し、学習を支援し、個別のニーズに対応する学校)を前進させるために、学校が特別なニーズをもつ子どもたちに役立つための原則や政策を示した。

われわれは以下を信じ、かつ宣言する。
特別な教育的ニーズをもつ子どもたちは、彼らのニーズに合致できる児童中心の教育学の枠内で調整する、通常の学校にアクセスしなければならず、このインクルーシブ志向をもつ通常の学校こそ、差別的態度と戦い、すべての人を喜んで受け入れる地域社会をつくり上げ、インクルーシブ社会を築き上げ、万人のための教育を達成する最も効果的な手段であり、さらにそれらは、大多数の子どもたちに効果的な教育を提供し、全教育システムの効率を高め、ついには費用対効果の高いものとする。



世界教育フォーラム


 2000年4月26日から28日にかけて、セネガルのダカールにおいて開催されたフォーラム。1990年の「万人のための教育」会合で決議された「万人のための教育宣言」及び「基礎的な学習ニーズを満たすための行動の枠組み」の,その後の進捗状況の把握及び今後の展開の方向性等に関する討議を行った。各国及び各機関が取り組むべき課題として、女子教育、教育の場におけるテクノロジーの有効活用、HIV/AIDSの社会に対する脅威(基礎教育における配慮)、教育関係統計データの整備、開発途上国による自助努力の重要性に対する認識の深化、教育と貧困削減に明確な意志を示す国に対する積極的支援、ドナー側による援助調整の促進・手続きの共通化が主に討議された。

「万人のための教育」ダカール行動枠組み:われわれの共同の公約を果たす


 以下の6つの目標、その達成のための戦略、今後のフォローアップ方法等が盛り込まれた「ダカール行動の枠組み」)を採択。各国は遅くとも2002年までにその目標の実現のために必要となる具体的な行動計画を立てることが求められた。

  1. 最も恵まれない子供達に特に配慮を行った総合的な就学前保育・教育の拡大及び改善を図ること。
  2. 女子や困難な環境下にある子供達,少数民族出身の子供達に対し特別な配慮を払いつつ,2015年までに全ての子供達が,無償で質の高い義務教育へのアクセスを持ち,修学を完了できるようにすること。
  3. 全ての青年及び成人の学習ニーズが,適切な学習プログラム及び生活技能プログラムへの公平なアクセスを通じて満たされるようにすること。
  4. 2015年までに成人(特に女性の)識字率の50%改善を達成すること。また,全ての成人が基礎教育及び継続教育に対する公正なアクセスを達成すること。
  5. 2005年までに初等及び中等教育における男女格差を解消すること。2015年までに教育における男女の平等を達成すること。この過程において,女子の質の良い基礎教育への充分かつ平等なアクセス及び修学の達成について特段の配慮を払うこと。
  6. 特に読み書き能力,計算能力,及び基本となる生活技能の面で,確認ができかつ測定可能な成果の達成が可能となるよう,教育の全ての局面における質の改善並びに卓越性を確保すること。


教育とは、「知ることを学ぶ」「為すことを学ぶ」「共に生きることを学ぶ」「人間として生きることを学ぶ」という人間の学習ニーズを最善かつ最大の意味において満たすことである。教育こそ個々の才能や潜在能力を見出し、学習者の個性を創り出す。その結果、生活が向上し社会もより良くなるのである。



57回国連総会


 ヨハネスブルグ・サミット実施計画の交渉過程で,国内NGOの提言を受け,我が国が提案し,各国政府や国際機関の賛同を得て実施計画文書に「2005年から始まる『持続可能な開発のための教育の10年』の採択の検討を国連総会に勧告する」旨の記述が盛り込まれることとなった。これを受け,我が国より,第57回国連総会に「持続可能な開発のための教育の10年(DESD)」に関する決議案を提出。我が国の働きかけにより,先進国と途上国の双方を含む47ヶ国が共同提案国となり,満場一致で採択された。(外務省HP

持続可能な開発のための教育の10

1.2005年からの10年を「持続可能な開発のための教育の10年」と宣言することを決定する。

  1. ユネスコに対し、「持続可能な開発のための教育の10年」のリード・エージェンシーとして、Education for AllEFA)等の既存の教育推進プロセスとの関係を整理しつつ、国連諸機関をはじめとする国際機関、各国政府、NGO等と協議し、国家教育計画に盛り込む具体的対応の指針となる国際実施計画案を作成するよう要請する。
  2. 各国政府に対し、ユネスコが作成する国際実施計画案に基づき、2005年までに2005年からの「持続可能な開発ための教育の10年」を実施するため、国家教育計画に必要な具体的行動を追記するよう呼びかける。
  3. 58回総会(注)の仮議題に「持続可能な開発のための教育の10年」を含むことを決定する。(注:2003年)


国連持続可能な開発のための教育の10年国際実施計画


 200212月の第57回国連総会において採択されたDESDを受け、ユネスコがDESDを主導し国際実施計画を策定するよう要請された。この文書はこの要請に応えたものである。

ESDは、基本的に価値観を問題にするものであって、中心に置くべきものは、現在及び将来の世代を含む他者の尊重、相違と多様性の尊重、環境の尊重、我々が住む惑星の資源の尊重といった、尊重の価値観である。教育は、自分自身や他者についての理解、広範な自然環境や社会環境への我々のつながりについての理解を可能にし、この理解は、尊重を築き上げるための強固な基盤となる。正義、責任、探究及び対話に対する感覚に従い、ESDは、すべての者が生活基盤を奪われることなく満ち足りた生活を送ることを可能にする行動や実践を身につけるよう、我々を動かすことを目的としている。
ESDは、質の高い教育への関心を映し出し、次のような特徴を示す。

  • 学際性、総合性:持続可能な開発のための学習は、すべてのカリキュラムに盛り込まれるものであり、個別の課題ではないこと
  • 価値による牽引:持続可能な開発を支える価値観や原則を共有すること
  • 批判的な思考と問題解決:持続可能な開発が抱えるジレンマとそれへの挑戦を明らかにすることへの自信を導くものであること
  • 様々な方法:言葉、美術工芸、演劇、討論、経験など、プロセスを形作る異なった教育法
  • 参加型の意思決定:いかに学ぶかについての意思決定に学習者が参加すること
  • 地方との関わり:地球規模の問題に加えて地方の問題を扱うこと、及び学習者がもっとも普通に使っている言葉を使うこと

(「国連持続可能な開発のための教育の10年国際実施計画案」全文仮訳 ユネスコ)



ESD世界会議


 2005 年から始まったESD 10 年の中間年を迎えるにあたり、ユネスコ、ドイツ教育省、ドイツユネスコ国内委員会の共催によりドイツのボンで開催された会議。ESDに関する各国の成功事例の共有や実績の検証をもとに、ボン宣言として成果をまとめた。

ボン宣言


 ESDの意義、進捗等に言及するとともに、政策レベルと実践レベルでの行動を呼びかけた。また、ESD10年最終会合をユネスコと共同開催するという日本政府の意向を歓迎する旨が明記された。この最終会合が、名古屋市と岡山市で開催されたユネスコ世界会議である。

教育や生涯学習を通して、我々は、経済や社会的公正に基づいた生活様式や、食糧安全保障、生態系の健全性、持続可能な生活、あらゆる生命に対する尊重、そして社会的連帯感や民主主義、集団による行動を育む力強い価値観を獲得することができる。ジェンダーの公正、特に女性や女児の教育への参画は、開発と持続可能性を実現する上で極めて重要である。持続可能な開発のための教育は、若者の持続可能な生活の機会や願い、未来を確たるものにしていく上で、今まさに必要とされている。



37回ユネスコ総会


 201311520日にパリのユネスコ本部において、第37回ユネスコ総会が開催された。この中で、「国連ESD10年」(20052014年)の後継プログラムとして、「グローバル・アクション・プログラム」が採択され、次の年の第69回国連総会へ提出されることとなった。

持続可能な開発のための教育(ESD)に関するグローバル・アクション・プログラム


序論1. 持続可能な開発は政治的な合意、金銭的誘因、又は技術的解決策だけでは達成できない。持続可能な開発のためには我々の思考と行動の変革が必要である。教育はこの変革を実現する重要な役割を担っている。そのため、全てのレベルの行動によって持続可能な開発のための教育(ESD)の可能性を最大限に引き出し、万人に対する持続可能な開発の学習の機会を増やすことが必要である。持続可能な開発のための教育に関するグローバル・アクション・プログラムは、この行動を生み出すためのものである。本文書は、グローバル・アクション・プログラムの枠組みを示すものである。


 以下、目標(ゴール)と目的、優先行動分野、ESDに対する政策的支援・包括的取組・教育者の育成・若者の参加の支援・地域コミュニティーの参加の促進などのアクションプログラムで構成されている。


持続可能な開発のための教育( ESD)に関するユネスコ世界会議


 「国連持続可能な開発のための教育の10年」の最終年である201411月に、国連教育科学文化機関(ユネスコ)と日本政府の共催により、愛知県名古屋市及び岡山市において開催された。

あいち・なごや宣言


我々参加者は、
15. ユネスコ加盟国の政府に以下のような更なる取組を求める。

  1. 教育の目的、教育を支える価値をレビューし、教育政策とカリキュラムがどの程度ESD のゴールを達成しているかを評価し、システム全体としての全体的アプローチ及びマルチ ステークホルダーの協力、教育セクター、民間企業、市民社会及び多様な持続可能な開発 分野に従事する人々のパートナーシップに特別な注意を払いながら、教育、訓練、及び持 続可能な開発政策へのESDの統合を強化し、教員や他の教育者の教育、訓練、職能開発 が十分にESDを取り入れることを確保し、
  2. 特にGAPの五つの優先行動分野に沿った国内及びサブナショナルレベルのフォーマル 及びノンフォーマルな教育・学習の両方に必要な機関の能力を構築するなど、政策を行動 に移すために実質的な資源を配分、結集し、
  3. 第一にESDを教育の目標として残し、分野横断的なテーマとしてSDGsに取り入れる ことを保証し、第二にESDに関するユネスコ世界会議(2014年)の成果を2015年5月19 日から22日に韓国・仁川で開催される世界教育フォーラム2015において考慮されるよう保 証することでポスト2015 年アジェンダ及びそのフォローアッププロセスにESDを反映、 強化させる。


世界教育フォーラム2015


 2015年5月19日~22日にかけて、大韓民国(仁川市:インチョン)において開かれた会議。2000年にセネガルのダカールにて採択されたダカール行動枠組みが目指した「万人のための教育」目標の達成期限(2015年)を迎え、これまでの進捗を振り返るとともに、2015年以降に取り組むべき課題等について議論した。会議の成果として、仁川宣言が採択された。

*EFA目標の達成度について評価

  • ゴール2:初等教育の完全普及2000年当時からは改善が見られるものの、現在もなお約5,800万人もの子どもたちが小学校に通っていない。そして、その多くが紛争地域などで暮らす子どもたちである。
    ゴール4:世界の15歳以上(特に女性)の非識字人口を半減達成できた国は全体の23%にとどまり、現在も7億8,100万人の15歳以上の人びとが母語の読み書きができない。非識字者の2/3を女性が占めるというジェンダー間格差も改善されていない。識字は、最もネグレクト(放置)された問題のひとつである。(詳しくはUNESCO 『EFAグローバル・モニタリング・レポート2015』(英文)参照。)


*インチョン宣言は、同年9月の国連総会の特別サミットで策定される「持続的な開発のための目標(SDGs)」の17の「ゴール4」として統合されることが確認された。

*公益社団法人 日本ユネスコ協会連盟HP

仁川宣言

2030 年に向けて:教育のための新たなビジョン
5.我々のビジョンは、教育を通じて生活を変容していくことであり、我々は、教育が開発を進めてい く上での主要な原動力であること、また SDGs で提案されているその他の目標を達成する上で、教 育が主要な役割を果たすべきものと認識している。我々は、ホリスティックで、野心的で、意欲的 で、誰も置き去りにしない、という唯一無二の教育アジェンダに早急に取り組むことを約束する。(ESD 円卓会議配布資料/2015/06/12/開発教育協会)