日本の「持続可能な開発のための教育」

我が国における「国連持続可能な開発のための教育の10年」実施計画(ESD実施計画)


 我が国における「ESDの10年」実施計画は、平成18年3月に「国連持続可能な開発のための教育の10年」関係省庁連絡会議(内閣官房副長官を議長とする内閣に設置された会議)により決定された計画です。その後この計画は、平成23年6月に改訂されています。)

計画の構成

  1. 基本的考え方
  2. ESD実施の指針
  3. ESDの推進方策
  4. 評価と見直し


1. 序

 世界の状況から見て次のような課題があるとされています。

  • 人口増加
  • 地球温暖化
  • 穀物生産量の伸び悩み
  • 水のストレス(制約)を受ける人口の増加
  • 生物の多様性の喪失


 また、国内の課題として挙げられているのは次のようなことです。

  • 少子高齢化
  • 格差社会
  • 無縁社会


 こうした課題に対し、平成23年の改訂のポイントとして次の記述があります。

  • 新しい学習指導要領に基づいたESDの実践、ESDの推進拠点としてのユネスコスクールの活用など、学校教育を活用してESDを推進。


2.基本的考え方

 ここで注目すべきは、ESDの目標です。そこにはこう書かれています。

  • ESDの目標は、すべての人が質の高い教育の恩恵を享受し、また、持続可能な開発のために求められる原則、価値観及び行動が、あらゆる教育や学びの場に取り込まれ、環境、経済、社会の面において持続可能な将来が実現できるような行動の変革をもたらすことであり、その結果として持続可能な社会への変革を実現することです。


 これに対し、我が国の取組を推進するためにESD活動の「見える化」「つながる化」の推進が、我が国の実施計画の目標となっています。

  • そこで、こうした取組・活動の中から、ESDの理念に合致するものを掘り起こ し、ESD活動の一つとして捉え直すとともに、社会的にあまり認知されていないESD活動を多くの人の目に触れるよう発信する「見える化」を図ります。
  • また、活動実践者同士を連携させるとともに、実践者と支援者を橋渡しする「ESDのネットワーク」を形成し、「つながる化」を図ります。


3.ESD実施の指針

 指針として、(1)地域づくりへと発展する取組、(2)教育の場、実施主体、(3)教育の内容、(4)学び方・教え方、(5)育みたい力、(6)多様な主体の連携、協働、(7)評価、という項目が挙げられています。これらの中で注目すべきは次のような内容だと思われます。

  • 子どもの参画を進めることにより、大人の参画も促される
  • ESDは学校教育、社会教育、民間による教育など、あらゆる主体が実施主体となることが重要
  • 学び方・教え方については、「具体的な行動」を促すことが大切
  • 批判力を重視した代替案の思考力を育むこと


4.ESDの推進方策

 ESDの認知が進まない現状に対し、「ESDは全く新しい取組ではなく、既存の教育を発展させることにより実践が可能です」としたうえで、普及啓発に関し、次のような方針が掲げられています。

  • また、ESDの理念や取組が分かりにくいとの指摘がある一方、実はESDの理念に合致していながら、いまだESDの一つとして認知されていない活動が既に国内各地で行われています。こういった隠れたESD活動を掘り起こし、改めてESDの一つとして捉え直すため、これらの活動を登録するデータベースを、関係省庁、関係団体の協力の下に構築し、ウェブサイトを用いて発信します。


 その他、教育機関における取組を通してESDを推進してくこと、学識経験者や教育関係者等による円卓会議の開催、NPOと行政のパートナーシップの構築、人材育成などの方針が述べられています。

5.評価と見直し

  • 2014年、ESDの10年の最終年である2014年に全体評価を行い、2015年以降のESDの推進に取り組んでいくとされています。


ESDの10年(2005~2014)ジャパンレポート


 2005年にユネスコにより作られた「ESDのための10年国際実施計画」は、2005年~2014年の10年間の計画でした。この最終年にあたり関係省庁連絡会議により作成されたのが、このジャパンレポートです。関係省庁連絡会議とは、内閣に設置された連絡会議で、内閣官副長官を議長とし、外務省・文部科学省・環境省を中心に、財務省・防衛省を除く各省により構成されています。

 このレポートでは、「第1部10年間の日本の成果と課題」において、この10年の取組を次の五つに分類し、その成果を整理しています。

2.国連ESD10年における日本のESDの特徴及び成果

  • 特徴1 政府による2014年までの目標と計画の策定
  • 特徴2 学校教育における取組
  • 特徴3 社会教育における取組/地域における多様な主体が参画・協働する取組
  • 特徴4 トップダウンとボトムアップの取組の有機的結合
  • 特徴5 東日本大震災が与えた教訓・影響


 特徴1では、日本政府による2014年までの国内のESDの目標は、①持続可能な社会を担う「個人の育成」、②ESDを推進する主体の「ネットワーク化」と定めたことが述べられています。

 特徴2では、教育振興計画において、重要な理念の一つとしてESDを位置づけたこと、学習指導要領に持続可能な社会の構築の視点を盛り込んだこと、ユネスコスクールを核にして拡充の取組が行われてきたことが述べられています。

 特徴3では、地域ぐるみの先駆的取組、公害経験を教訓とした社会教育と地域再生の取組、CRS(企業の社会的責任)の推進の報告がされています。

 特徴4では、環境教育等促進法の成立、ESDを推進する民間のネットワークであるEDSJの取組、関係省庁連絡会議が設置した、行政・NPO・教育機関・企業等の関係者の集まりである「円卓会議」の取組が書かれいます。

 特徴5では、東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故とESDの関連について述べられています。

次に、今後の課題・展望として、以下の文章が続きます。

3.2015年以降の日本のESDの課題・展望

  • (1)日本のESDの推進計画の再構築
  • (2)学校教育現場へのESDの更なる浸透
  • (3)社会教育現場/地域における更なるESDの推進
  • (4)国際的な枠組み構築への貢献


 そして、これら全体の取組の総括としては、次のように書かれています。

 「2.国連ESDの10年における日本のESDの特徴及び成果」でみたとおり、国連ESDの10年の提唱国である日本においては、多くの関係者の努力により、学校教育現場と社会教育現場等の様々な場面で、ESDが大きく前進しました。
 しかし、その成果は、教育や学習のレベル、あるいは一定範囲の生産者や消費者の行動の変化、一部の地域社会での変革に留まっています。国全体が、将来にわたり持続可能な、低炭素で、自然と共生した、循環型の経済社会システムへと変革するためには、その基盤となるESDを2015年以降も、一層強力に進めていく必要があります。


 さらに第2部では、各主体による取組、第3部において、日本における30の優良事例が紹介されています。

我が国における「ESDに関するグローバルアクションプラン」実施計画


 この実施計画は、前年のジャパンを踏まえ、」我が国における「ESDの10年」実施計画(改訂)の後を引き継ぐ計画です。ユネスコにおいては、2013年にグローバルアクションプラン(GAP)が作られており、さらに翌年にはあいち・なごや宣言が出ていますので、これらの成果を踏まえて策定された実施計画となります。基本的考え方として、次の3つの項目が挙げられています。

  1. 優先行動分野の推進
  2. ステークホルダーのコミットメントの促進
  3. 国際アジェンダへのESDの反映


 この中で、1の優先行動分野の推進がGAPの中心となる内容です。2のステークホルダーのコミットメントの促進は文字どおりの意味です。3の意味は、2015年に採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にESDの考えが反映されている、ということです。ここでは、1の内容を少し詳しく見てみます。

政策的支援

 政策的支援については、次の4つの項目が挙げられています。

  1. 教育政策へのESDの位置づけに関すること
  2. 持続可能な開発に関する政策へのESDの反映に関すること
  3. 多様なステークホルダーの連携の促進に関すること
  4. 国際的なESDの推進等に関すること


a)では、学習指導要領や教育振興基本計画にESDが位置付けられたことを踏まえ、ESDを学校現場で推進するための「ESD実践の手引き」の作成等についての記載が、b)では主に、環境、エネルギー等の課題に対し、人材の育成や広報啓発活動の実施、多様な環境における学習機会の提供についての記載があります。

機関包括型アプローチ(ESDへの包括的取組)

 機関包括型アプローチとは、学校なら学校という機関の一部の教員や一部の学習活動だけでESDへの取り組みをするのではなく、学校という機関全体を包括した取組を行うということを表しています。

 例えば環境教育でいえば、総合的な学習の時間に一つの学年だけが環境の学習をするのではなく、学校全体のカリキュラムと通じて取り組むことであり、学校の施設・設備もまた環境に配慮したものにする取組を含む、ということです。具体的な例が、「ESD推進の手引き」に書かれています。

教育者

 ESDに関する教員の指導力向上のための研修や諸外国との職員交流、ESDを支援する実践者の育成等について述べられています。

ユース

 若者の参加の支援として、ユースフォーラムの開催、体験活動推進プロジェクトの実施、青少年の国際交流の推進などが挙げられています。

地域コミュニティ

 地域レベルの多様なステークホルダーのネットワーク強化のための情報発信等についての記載があります。

ESD推進の手引き


 機関包括型アプローチのイメージとして、次のようなエコスクールが例として挙げられています・

施設・設備

  • 校舎屋上に太陽光発電パネルを設置
  • 太陽光をプールの温水シャワーに利用
  • 再生木材チップを使用したルーバー
  • 校舎内装の木質化
  • 屋上緑化
  • リサイクル材を使用した舗装
  • 太陽光と風力発電による外灯
  • ビオトープ


 こうした施設・設備の学校で、学校教育目標にESDを位置づけ、教科学習においても教科外の学習においてもESDを学び、さらに他校や地域の大学・企業と連携する学校。こうした取り組みが機関包括型アプローチと呼ばれるものです。