全国の子どもに関する条例を概観したので、次に横須賀市における子どもに関する条例をみてみます。以下の条例は、その内容が必ずしも子どもだけに限られているわけではありませんが、たくさんある条例の中で、市が基本理念や基本方針を打ち出すために定めた条例に該当するものであり、子どもに深く関連したものとなっています。



横須賀市における子どもに関連する条例

犯罪のない安全で安心なまちづくり条例(平成20年3月28日)


 この条例は、本市における犯罪の防止に関し、施策の基本を定めたものですが、子どもに関する内容が多く含まれています。本文には次のようにあります。

子どもが犯罪に巻き込まれる事件や少年による重大事件の発生が後を絶たない状況は深刻であり、将来を担う子どもを、被害者にも加害者にもさせないための取り組みは、地域社会が一体となって行っていくことが重要です。


 具体的には、以下の条文があります。

(安全に係る教育の充実)
第15条 市は、家庭、学校、地域と連携して、児童等が犯罪に遭わないための教育及び児童等に犯罪を起こさせないための教育の充実が図られるよう努めるものとする。

(安全・安心まちづくり旬間等の指定)
第17条2 市は、児童等を犯罪被害から守る活動を推進するため、毎月1日と10日を子ども安全の日として指定し、その趣旨にふさわしい活動を実施するものとする。

(学校等における児童との安全確保)
第18条 学校等を設置し、又は管理する者は、保護者、地域住民、警察その他の関係機関と連携し、学校等における児童との安全の確保に努めるものとする。

(通学路等における児童の安全確保)
第19条 児童等が利用している道路又は日常的に利用している公園等を管理する者、保護者、学校等の設置者及び地域住民は、警察その他の関係機関と連携し、通学路等における児童等の安全の確保に努めるものとする。


 このように、犯罪のないまちづくりは、子どもにとってとても大切なことだといえます。条例は基本方針を定めたものですから、この方針を基礎に、どのような取り組みを行い、どのような成果をめざすのか、具体的な対応が重要となります。

横須賀市地域で支える条例(平成25年12月17日)


 平成23年3月に東日本大震災を経験した私たちは、地域社会とは地域住民のつながりのことであったことを思い知らされました。「家族や地域社会の崩壊」という「大きな社会問題」を前にして、地域における支えあいの必要性を宣言した条例となっています。前文には次のように書かれています。

私たちは、東日本大震災を経験し、互助活動による災害時の被害の軽減とその他生活上の重要課題の解決には地域活力の再生が不可欠であると改めて認識した。…将来にわたり、地域住民が支え合い、安心して快適に暮らせる社会を実現するために、この条例を制定する。


 子どもに関する内容は、次の点にあります。

(子ども達に対する親・保護者・地域社会の役割)
第4条 本市の未来を担う子ども達の成長を地域で支えるため、親その他の保護者及び地域社会は次に掲げる役割を担うものとする。
(1) 親その他の保護者は、子どもが心身ともに健やかに、家庭の絆や温かさを感じながら安心して過ごせる家庭環境づくりに努めること。
(2) 地域社会は、未来を担う子ども達が地域への愛着と誇りを持てるよう、地域の環境づくりに地域全体で取り組むことに努めること。


 ここでは、親等の保護者の役割と地域社会の役割が述べられています。地域社会の役割は、確かにここに書かれているとおりだと思います。ただ、ここでいう「地域」を私たちはどのような「地域」ととらえているのか。私たちの住んでいる「地域」のどこに愛着と誇りを持たせるたいのか。そこの認識が重要だと私は思います。

横須賀市いじめ等の対策に関する条例(平成26年7月1日)


 平成25年6月28日、いじめ防止対策推進法が公布されました。第12条には、「地方公共団体は、その地域の実情に応じ、当該地方公共団体におけるいじめ防止等のための対策を総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針をさだめるよう努めるものとする」とあります。

 これを受け、横須賀市では、平成26年7月1日に条例が制定され、あわせて条例に基づいた「横須賀市いじめ等の対策に関する基本方針」が定められています。条例は、いじめの未然防止、早期発見及び早期対応、そして体罰の根絶及び学校問題の解決を図ることを目標としており、市民による通報義務を規定してます。

(いじめ、体罰及び学校問題に対する措置)
第16条 市民は、子どもからいじめ、体罰若しくは学校問題に係る相談を受けた場合又はいじめ、体罰若しくは学校問題を発見し、若しくは疑いがあると認めた場合は、学校へ通報するものとする。


 さらに、第17条では、横須賀市いじめ等課題解決専門委員会の設置、第19条には財政的措置等の条文もあり、実効性が担保されている条例だと思います。

共生社会実現のための障害者の情報取得及びコミュニケーションに関する条例(平成27年12月18日)


 各自治体では、手話言語条例の制定が進んでおり、神奈川県においても平成26年12月25日に手話言語条例が制定されています。本市においては、およそ1年後、この条例が制定されました。本市における条例は手話言語条例ではありませんが、全ての障害者を含む形でコミュニケーションの推進を規定しており、画期的な条例だと思います。

 私は、いじめも体罰もいずれもコミュニケーション不全が根本的な原因だと考えています。すなわち、いじめや体罰を撲滅する方策は、その取り締まりにあるのではなく、コミュニケーションを円滑に行うことが大切だと考えています。まさにこの条例の趣旨は、全ての市民の安心・安全や幸福につながっていると思います。前文には次のように書かれています。

本市では、「手話が言語である」ことの意義や、多様な手段によるコミュニケーションの必要性等を認識し、障害の種別や有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現を目指すため、この条例を制定する。

 
 この条例は障害者のコミュニケーション支援の条例ですが、全ての市民にとっても、多様な手段によるコミュニケーションの必要性があると私は思っています。いじめや体罰もコミュニケーション不全から起こるものであり、地域で支えることも犯罪のないまちづくりも、全ては、円滑なコミュニケーションにより実現するものだと考えています。 

 横須賀の市民一人ひとりがそれぞれに、子どもたちを核としてコミュニケーションをとりあうまち。そんな横須賀市が目指すべきまちではないでしょうか。